まちに住む人々6―お茶の水駅

 今日も休日出勤です。

 もう、ずっと昔の話。JRお茶の水駅の駅前、お茶の水橋側の出口に大きなカセットラジオを持ったオジサンが住んでいました。住んでいたところは、改札を出た右手、神田川側。

 働き者のオジサンは箒を持ってよく駅前広場を掃除していました。キオスクのお姉さん方から可愛がられ、よく持ち帰り弁当を食べていました。

このお掃除オジサン、音楽が好き。昼間は大音量でクラシック音楽を聴いていました。インテリ? たまには、都はるみの歌も聴いてくれましたが、基本的に演歌やポップスはお気に召さなかったようで、ボクにはちょっと高尚すぎるオジサン。

 掃除好き、きれい好きということもあって、みんなに愛されていましたが、日が暮れかかって来ると、JRのしかめっ面したお兄さんたちが、そこのけそこのけ、と排除。なにも悪いことをしているわけではないのに、邪険な扱いをされ続けていました。

 掃除オジサンはそんな扱いにもめげず、お茶の水の住民として暮らしてきました。

 「路上で住んでいても国勢調査の対象になるんだって」。国勢調査のある年のことそんな話が広がってきました。都心から人がいなくなり、千代田区も三万人を割るのでは、とささやかれていた頃です。

 調査は、深夜の0時。その時点で居たところで調査を実施するとか。オジサンの住居は神田駿河台。ところが、その前日から突然行方不明。国勢調査を嫌がってちょっと逃げた? ところが、その後お茶の水には現れず。まだ、現在のような不況、ホームレスなんていなかった時代の話です。

あのオジサン、今でも覚えている人います?(I.K.)