まちに住む人々8―淡路坂2

 今、進めている書籍の内容をご紹介するわけにはいきませんが、これに類した話を一話。

 かつて、一世を風靡した噺家がいました。東の古今亭志ん朝、西の桂枝雀――といわれた枝雀。その枝雀の落語のなかで「おもいで屋」という落とし噺があります。舞台は古道具屋。主人公はそこの婆さん。その古道具屋に男が訪れ、あれこれ品物を吟味する、という筋立てなのだが、話は婆さんは〈モノ〉を売っているのではなく、〈想い出〉を売っている、というところ。なので、大した想い出が込められていない机は市場価格から見ても突拍子もなく安く、逆に想い出がいっぱい詰まった耳かきは20万円、なんぞと法外な値段が付きます。外見はただの耳かきですが、その耳かきには……。実はこれは買ってからのお楽しみかも知れませんが、その婆さん、「これらの品物は、品物を通して、モノを通して想い出が蘇る、その切っ掛けとなるもの」という。それまでの所有者の想い出をともに分かちあえたくなったら、その品物を取りだし、想い出にひたる。

 モノというのは、その物自体だけでなく、それにまつわるさまざまな心の交流、胸が詰まるほどのいっぱいの想い出が含み込まれているはず。淡路坂のオジサンも摩天楼もともにボクの重い想い出として残されています。

 この想い出買ってくれる方いらっしゃる?(I.K.)

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